サルでもわかるTPP(2012年3月バージョン)

第8章 米韓FTAを参考にしよう

◆1.見本は米韓FTA

秘密だらけでよくわからないTPPの実態を少しでも見極めようと、国会議員で構成される「TPPを慎重に考える会」(会長:山田正彦元農水相)が2012年初頭に訪米調査を行った。アメリカは日本に何を求めているのか、と問いかけたところ、USTR(米通商代表部)の幹部から返ってきた答えは、

「米韓FTAを見よ。それが日本に求めるものと同じであり、米韓FTA以上のハイレベルなものを日本には要求するだろう」

というものだったという。

米韓FTAというのは、アメリカと韓国との間で結ばれた自由貿易協定(Free Trade Agreement)のことだ。2011年の暮れに韓国の国会で批准が強行され、2012年の初頭には発効する予定だったが、野党の激しい抵抗にあって、2012年2月現在ではまだ発効できずにいる。

野党が激しく抵抗するのも当然で、その内容はとんでもなく屈辱的な不平等条約だ。

この米韓FTAとTPPで確実に共通するのは悪評高きISD条項だが、韓国人が「毒素条項」と呼ぶひどい条項は他にもまだまだある。

どこまでがTPPに入って来るかはわからないが、アメリカが参考にしろ、というのだから、知っておいて損はないだろう。少なくともアメリカという国がどんなえげつない国なのかがよくわかるヨ。

◆2.ラチェット条項

ラチェットというのは一方向にしか回転しない歯車のことを言う。ラチェットのように一方向にしか行かない、つまり一度自由化したものは後戻りできない、というのがこの条項だ。米韓FTAで韓国は15年かけて牛肉の関税を撤廃し、完全自由化することになったが、その後もしアメリカでBSEが発生しても、韓国は牛肉の輸入を止めることはできない。どんな事情があっても、一旦自由化したものはそれを止めることができないんだ。

◆3.未来最恵国待遇

将来韓国がどこかほかの国と貿易協定を結び、その条件がアメリカに対する条件よりも有利だった場合、自動的に同じ条件がアメリカにも与えられる、というもの。アメリカは常に最高に恵まれた条件を与えられ、お山の大将であり続けられるわけだ。

◆4.非違反提訴

韓国がなにひとつ協定に違反していなくても、アメリカ企業が当初の想定どおりの利益をあげられなかった場合、韓国企業を訴えることができる、というもの。

ここまで来るとほとんど「おてんとさまが丸いのも、お空の色が青いのも、みんなおまえが悪いんだ」という感じで、もう理屈も何もあったもんじゃない。

何もしなくてもアメリカ企業は儲かり、どんなに努力をしても韓国企業は儲けることが許されない。「自由、自由」と声高に要求するアメリカなのに、これは自由競争を完全に否定するものだ。

◆5.サービス業の非設立権の認定

韓国内に事業所を置かなくても営業できる、というもの。事業所がなければ、韓国内に存在していないことになり、課税からも逃れられるし、提訴も受け付けない、と強弁することができる。韓国による法治を否定するようなものだ。

◆6.協定と国内法との関係

国際間の協定と国内の法律では、協定の方が上位に来る、つまり強い力を持つ、というのが国際的な常識だ。だから、協定と国内法が食い違うような場合には、国内法の方を変えなければならない。

アメリカの米韓FTA履行法101条も、そのことを念押しするものだ。韓国の国内法がFTAに合わせてきちんと修正されことをオバマ大統領が確認した後でFTAが発効する、と定めている。

ところが、こうして韓国にさまざまな無理を強いておきながら、アメリカときたら自国の都合が最優先。アメリカの法律に反する米韓FTAは無効にしてしまえるよう、米韓FTA履行法102条で定めているらしい。(韓国の弁護士ソン・ギホ氏による)

韓国は協定を守れ、でも自分は都合悪くなったら守らないよ……こんな身勝手を押し通そうとするなんて、信じられないね。

こんなにも不平等で呆れた内容の米韓FTAだが、韓国の国民にはその内容がほとんど知らされないまま決まってしまったらしい。日本は韓国の例を参考にすることができるんだから、そこからしっかりと学んで、絶対に同じ轍を踏まないようにしないといけないよ。